それがぼくには楽しかったから (小プロ・ブックス)

それがぼくには楽しかったから (小プロ・ブックス)


それがぼくには楽しかったから (小プロ・ブックス) それがぼくには楽しかったから (小プロ・ブックス)
小学館プロダクション 小学館プロダクション 風見 潤
¥ 1,890


   フィンランドに住む1人のコンピュータおたくの青年が、世界中にオープンソース運動を巻き起こし、一躍有名となった。
   彼の名はリーナス・トーバルズ。ヘルシンキ大学在学中に「Linux」というコンピュータのOSを作り出し、インターネット上で無料でソースコードを公開した。OSといえば大企業が開発した商用のものだけで、かつソースコードを公開することはタブーといわれていた時代に、彼の試みは驚くほどの大反響を巻き起こした。
   彼は決して野心を持ってLinuxの開発に臨んだわけではなかったが、結果的にLinuxは研究者や開発者、学生などで構成されるUNIXコミュニティで爆発的に広まり、今日ではマイクロソフトのウィンドウズを脅かすまでに成長した。
   本書には、このリーナス・トーバルズのLinux開発物語から、彼自身の心温まるプライベートの話題までが、幅広く取り上げられている。技術的な話ももちろんあるが、コンピュータ関係の人物を取り上げた自伝としては、比較的一般向けにわかりやすく書かれている。
 『それがぼくには楽しかったから』(『Just for Fun』)というのが本書のタイトルである。好きなことに一生懸命打ち込んだ結果、成功が訪れたという彼の「偶発的革命の物語」は、拝金主義や出世欲が見え隠れする本が多いなかで、好感が持てるものである。(土井英司)
The Hacker Ethic: A Radical Approach to the Philosophy of Business
UNIXという考え方―その設計思想と哲学
UNIXの1/4世紀 (Ascii books)
Hackers: Heroes of the Computer Revolution
ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち

■リーナスの素顔&オープンソース論 評価5 日付2008-09-04
書籍の内容は、「リーナスがLinuxをどういう経緯で開発したのか」はもちろんのこと、
「リーナスのオープンソース論」「リーナスの考える人生の目的」といったテーマのエッセイ、
そして、担当編集者との対話・交流、リーナスの家族・育った環境、ペンギンマスコットの由来など。
スタイルとしては、リーナス自身から、担当編集者から、ときおりリーナスの家族から、
といった形でパラレルに語られる、一種の”ドキュメンタリー番組タッチ”。

リーナスは、好きなことに時間を忘れて没頭する、ただのオタクである。
大学生で、世界を席巻するOSを作り上げたと聞けば、
「アインシュタイン以来の天才児現る!」といった様相だが、
彼は有名になってからもしばらく、アパートに住み、記者からの電話にも自分で出た。
自身の功績についても、「フィンランドの厳しい気候ではこもりがちになる」、
「他に楽しいことがなかった。僕の鼻がもう少し小さければより社交的だったかも」といった調子。
そんな飾り気のない革命家が、彼の正体である。
(「お金に目をくれない」なんて評価は、むしろナンセンス!
 だって、彼はそういった欲深ささえ”自然に”持ち合わせているから)

オープンソース論についても、下手な新書に触れるより、手っ取り早く正しく掴める。
また、彼は「娯楽」にひとつの価値を持ち合わせている点に、刺激を受けた。
”Just for fun”(原書のタイトル)、これが本書のテーマである。

情報系の学生はもちろんのこと、個人的には、中高生の読書感想文にオススメ。
ステレオタイプの大人には、鼻に付く内容だと思う。
■お金よりも誇りに生きがいを感じる人たちに次世代を感じます。 評価5 日付2008-01-24
飛ぶ鳥を落す勢いで拡がっているオープンソースムーブメントの中核リナックスの創始者リーナス・トーバルズ氏の本です。どのようにしてリナックスが開発されてきたのか、日記風に回想されて書かれており、いわゆるオタクという人種の生活ぶりがわかります。内容には難しい用語のたぐいはあまり出てきません。でも、欲のない人達なんですね。市販してもおかしくないほど完成度の高いソフトを無料で公開し、協力し合って開発していく。私も過去にプログラマをしていた時期がありましたが、当時は到底考えられないことです。この本を読んで、ますます、オープンソースムーブメントを応援しようという気持になりました。また、同時にいつもお世話になってるこのモジラでさえもいとおしくなります。住居を限定せず、世界中を拠点に活動する活動家たちにエールを送りたいです。
■著者のLinus Torvalds氏自体に興味がある人向け 評価3 日付2007-11-15
Linuxというカーネルの開発トップのLinus Torvalds氏の自伝.スポーツ選手じゃないのに若くして自伝になる内容があるのがまずすごい.ソフトウェア開発に関する部分には特別目新しいことは無いと思う.知っている内容が多いだろうし,この分野はインターネット上で自由にアクセスできるものが一次情報である場合が多いし.そして,ソフト開発に縁がない人の場合は興味がそそられないだろうし,Linuxやオープンソース自体に興味を持った人にとってもストライクとは言えない内容.そういう意味で,位置付けが微妙な本である.

そんなわけで,この本を書籍として読む第一の利点は可読性の高さだと言える.Linus Torvaldsという人物自体に興味があるならばそれを求めて書籍代を払う価値があるだろう(とくに中古で安く買えるなら).著者の心の中とか人となりに関してこれほどコンパクトにまとめられた情報は他にない.本書を読むとLinus氏の温厚で冷静で抜け目ない正確がよくわかる.「優しい独裁者」という比喩もよくわかる.意外と毒っけを持っていることもわかる.
■Just For Fun 評価4 日付2007-02-06
Linuxの産みの親Linus Torvaldsの早過ぎる回想談。平易に書かれているので一般の方にも親しめるが、ソフトウェアに縁の無い方が本書を手に取るとは思えないので、やはり専門家向けにLinusの信条をプライベートを含め語ったものと言えるだろう。

Linux Communityに住んでいる方は勿論、ソフトウェア開発に携わる人にとっては本書に書かれている内容はプライベートな事を除くと(風説にせよ)おおよそ知っているものなので、それ自身驚くべきものではない。むしろ巻末に有名なA.Tanenbaumとの論争の様子が詳細に載っているのが面白かった。Linusは元々、TanenbaumのMinix(プログラム、本)に触発されてLinuxを書き出したので、いわば精神的な師弟関係にある筈なのに、意見が悉く異なるのが興味深い。この論争でTanenbaumが一貫して自分を教授の立場に置いて、Linusを一学生扱いしている(事実なのだが)のに対し、Linusは余裕を持って皮肉交じりに応えているのが微笑ましい。私も入社後、Minixの本を輪講したのだが、自分でカーネルを書こうとは夢にも考えなかったなぁ。

本書の内容からやや離れるが、Linusの最大の功績はLinuxそのものと言うより、「オープン・ソフトウェア」の概念を世界に拡めた事だろう。しかも、声高に叫ぶ事なく、Linuxという実体を伴って。この概念のキーワードは「open」と「give and take and give」である。後者は、自分も貢献するが、自分が享受したものは他者へ無償で供与するという美しいものである。本書は、そんな概念を寡黙に打ち出したLinusの素顔を知るのに好適な書。
■前半〜中盤は知的好奇心をくすぐられる 評価3 日付2006-09-03
Linux開発者とジャーナリストが一人称の視点で書き記した単行本。
一節一節にテーマがしっかりと分かれていて、読み物としては比較的読みやすい部類。

前半から中盤に掛け、「なぜ、自分がコンピュータオタクになったのか」、「Linuxの生い立ち」、「世界中へと展開されたコミュニティーへの発展」について記されている。
ここでは、著者が自分の人生を振り返るように赤裸々に物事を語っているのがおもしろい。
社会的にとか道徳的にではなく、「自分にとって楽しいか否か」を基準とした典型的なオタク型思考。
Linuxについては元々OS開発ではなかったことや、それをするに至るまでの経緯、就職してからのコミュニティーへの関わり方、家族を持ちながらの接し方など話は多岐にわたる。奥さんとの馴れ初めは笑わせてもらった。

後半はあまりに爆発的な普及、浸透により一躍、有名人となった彼の苛立ちが感じられる。
オープンソースとした、OSは様々な主義主張と絡み合い、論議に巻き込まれることの不快感からか。
いずれにせよ、彼はLinuxによって莫大な利益や、名誉を望んだわけではないことが充分に伝わってきた。

専門用語が飛び交う節は読む人間を選ぶが、思考や思想についてニュートラルに受け止めることのできる人なら楽しめる一冊。

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